能と花の華麗な世界 次期家元池坊専好 能『花軍(はないくさ)』の舞台をいけばなで彩る
京都市上京区の金剛能楽堂で8月1日、『能と花の華麗な世界~次世代へつなぐ~花軍(はないくさ)』が開催されました。次期家元池坊専好が『花軍』にまつわるお話しに加え、いけばなで能舞台を彩りました。
京都で能の演目『花軍』が上演されたのは102年ぶり。シテは、能楽 金剛流二十六世宗家 金剛永謹氏が勤め、また、金剛氏の孫をはじめ4人が草花の精(子方)を舞いました。
『花軍』は、「立て花」に使う草花を求め深草を訪れた都人の夢まくらで、草花の精たちが花の位を競って合戦を繰り広げる様子を描いた作品です。室町時代の観世長俊によってつくられ、当時のいけばなを伝える点でも貴重なものとなっています。
まずはじめに次期家元が舞台上で『花軍』にまつわるストーリーや室町時代のいけばなについて解説。「曲中に“位あらそう”という文言が出てきますが、これは当時の社会状況を表していたのではないか、とも考えられます。まさに戦いが絶えなかった時代、位や地位などが大きな意味を持っていた環境の中で、花という存在になぞらえ、当時の社会状況、あるいはそこから生まれる人々の思いといったものをこの能に託して表現したのではないでしょうか」「お能もいけばなもそれぞれお互いから、また、それぞれが置かれた社会状況からインスピレーションを得て発達してきた、ということもあったのではと思います。さらに、両者の間に通底する中世の美意識も読み取れるかもしれません」と話しました。
「今日は、まさに自然の風景の中にさまざまな花がある、そういう和やかな、素朴な情景を表現したいと思い、自由花を制作しました」と作品について語りました。
その後、狂言『千鳥』に続いて、次期家元の作品が登場して舞台に運ばれ、能『花軍』が華やかに演じられました。
草花の精が纏う装束の一部と腰帯の織物は、錦織作家の龍村周氏が制作。いけばな作品にはオミナエシ、センノウゲ、キクなど演目『花軍』に登場する花が用いられ、さらにキキョウ、カゼクサなども配して初秋から中秋の雰囲気が漂っていました。日本文化の美のコラボレーションの世界に、観客は見入っていました。